去年から「原著で多読」を始め、とりあえずは20作品を目標にして中国語の本を読んでいます。
と言ってもまだ4作目なので先は長いです。
ここには記事として書いてませんが(別のところに書いてしまったので)、1作目は郁達夫の「春風沈酔的晩上」、2作目は同じく郁達夫の「沈淪」を読みました。
どっちも短編だったので、次は長い作品にしようと思って、3作目には人からのもらいものの霍達「穆斯林的葬礼」を選びましたが、なんと長すぎてまだ半分も読めていません。今も少しずつ読んでいるところです。
少し気分転換に選んだのが今回の陳継明「灰漢」です。
この前『十月』を買ってきたのですがまだ読んでおらず、その一番冒頭に載っていたのでこれに決めました。
中国の同時代の作家のことはまだまだ全然知らないので、目についたものから読んでいる感じです。
作品の舞台の中心は60-90年代後半くらいまでのとある村落。
灰漢というのはその村で、老いた家畜を屠殺する役目の男のことで、それは忌避される職業でもあり同時に村にとって必要不可欠な存在でもある。
村の決まりにより、ある一定の条件が備わったものだけが任命される。
主人公の銀鎖は、もともとは利発な子供だったのが、兄の妬みによる嫌がらせがきっかけですっかり自分の中に閉じこもるようになり、学校にも行かなくなり、成長したある日、ついに忌まわしい灰漢に任命されることに…。
呪術的というか前時代的な社会の共同体を形成する独特の雰囲気の中で、一人の人間が精神的に潰れていく姿を描いた作品…。
かと思いきや(いや、そうなんでしょうけど)。
中盤以降、次から次へと不幸が起こって、序盤はまだ兄のいたずらから学校へ行かなくなり…などエピソードとエピソードの間に関連性があるように思えるのですが、途中からなぜか奥さんは死ぬし子供は自殺するし兄はどんどん軍隊で成功して村にはほとんど寄り付かなくなるし、それでいて孤独になることで彼が荒れるわけではなく(精神的な敗残というのは、どちらかというと自分の賤しい職業にコンプレックスがあるような)、そんな彼も次第に中年期に差し掛かり、ある日ついに死んでしまったかと思ったら生き返り(謎)、さらにまたある日出奔してしまって…という、いやはや、展開が早すぎてどうにも行間が読み取りにくい作品でした。
中国語そのものも硬派というか、自分には結構大変でした。
【作者について】
陳継明
1963年生まれ。
甘粛省出身。
寧夏大学漢語文学系卒業。
1982年から作品発表を開始する。ヘミングウェイ、フォークナー、川端康成などに影響を受け、また60年代生まれの他の作家と同様、文革期の世相を作品に反映させている。
(百度百科を参照しました。)