『象は静かに座っている』の感想

去年フィルメックスで観てから、まとまった感想を書こうとしたのですが、うまくまとめられないまま時間が経ってしまいました。今、せっかくイメージフォーラムで公開中ですので、書きかけだったのを少し修正してブログに載せたいと思います。

 

『象は静かに座っている』
 画面に映される駅名から、彼らが暮らしているのは河北省石家荘市と思われる。満州里とは内モンゴル自治区の地名で、試しにGoogleMapで石家荘から満州里の距離を検索してみると、自動車道の経路の距離として2,385Kmと表示された。日本列島は北海道の宗谷岬から鹿児島の佐多岬までで約2700kmの距離だから、それより少し短いくらい。ちょっとした家出ではなく、自分の居場所を求めて途方もない旅を始めようとしているように思える。
 でも実はこの旅の結末はよくわからないままだった。みんなで揃って駅へ行くと列車は運休と言われてしまい、長距離バスに乗り換えてひとまず瀋陽へ向かうことに。途中、休憩なのか、バスから降りると夜の暗闇から象の声が聞こえる。そのまま立ち尽くす一行。そのどこでもない場所が求める場所だったのか、それともここから先へはもうどこへも進めないということなのだろうか。
 登場人物は全員、家族や友人や恋人との関係に問題を抱えている。言い換えれば、彼らは皆身近な人から自分の存在を喜ばれていない。それは幸せからは一番遠い状態にあると言えるかもしれない。多くのシーンで、歩く彼らの後ろ姿をカメラが追いかける構図がとられているが、表情が映し出されない分、この理不尽な状況に対する彼らの内心の怒りや悲しみがかえって切実に伝わってくるように思う。さらに、ある特定の一日の出来事として描くことで、この一日を迎えるまでの年月の中で、彼らがこれまでどんな言葉を言われ、何を感じながら生きてきたのか、思いを巡らせずにはいられない。
 いくつかの異なる家庭が描かれるが、それらは独立しているのではなく物語の進行に従って次第に絡み合っていき、最後の旅へと収束していく。異なる年代、異なる性別の人の間でクロスし合うような問題提起をすることで、このような苦しみが普遍的なもので誰にでも起こりうること、そしてそれに出会ったときにあなたならどうするか、もしくは出会わないようにするにはどうすればいいのか、そんなことを考えさせるように思う。

 

www.bitters.co.jp

読んだ本のメモ:だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人

 

少し前に買って、ようやく読み終わった本。

ネットとかでもしばしば「嫌なら出ていけ」という言葉を見ることがあるけど、実際に日本社会に居場所を見いだせず、飛び出した人々の言葉の数々には、共感する面も多い。タイのことはあまり知らないけれど、開放的な面と、外から見ているだけでは分からない面とが具体的に書かれていて勉強になった。

読んだ本のメモ:青年はなぜ死んだのか カルテから読み解く精神病院患者暴行死事件の真実

 

青年はなぜ死んだのか: カルテから読み解く精神病院患者暴行死事件の真実

青年はなぜ死んだのか: カルテから読み解く精神病院患者暴行死事件の真実

 

日本の精神医療、司法のあり方など多岐にわたる問題を考えさせられました。

ただそれだけでなく、決めつけや、先入観で物事を見てしまう、(自分から見て)話の通じない人のことを敵視し自分たちこそ被害者だという思いにとらわれるといったことは、自分も含め誰にでもあることで、レベルの差こそあれ、どこでも日常的に起こっているのではないかという気持ちがあります。

どうすれば救いを必要としている人が救われるのか?何度も考えては、難しい問題だなあというところで行き詰ってしまいます。

2019年・今年観た映画

今年はまたタイトルだけメモしていきます。

 

1.アリー/ スター誕生(Tジョイ新潟万代)

2.シュガー・ラッシュ:オンライン(ユナイテッドシネマ4DX)

3.迫り来る嵐(東京国際映画祭でも鑑賞済み)(ヒューマントラストシネマ有楽町)

4.パッドマン(TOHOシネマズシャンテ)

5.ヒューマン・フロー 大地漂流(イメージフォーラム

6.22年目の記憶(シネマート新宿)

7.タクシー運転手(キネカ大森・去年鑑賞済み)

8.1987、ある闘いの真実(キネカ大森)

9.花草女王(東京都写真美術館ホール)

10.モンラック・メーナム・ムーン(東京都写真美術館ホール)

11.世界一と呼ばれた映画館(横浜シネマリン)

12.村の靴職人(ユーロスペースノーザンライツ

13.ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ下高井戸シネマ

14.未来を乗り換えた男(ヒューマントラストシネマ有楽町)

15.アクアマン(ユナイテッドシネマお台場)

16.アリータ: バトル・エンジェル(ユナイテッドシネマお台場)

17.桃源(大阪アジアン映画祭・シネリーブル)

18.みじめな人(大阪アジアン映画祭・ABCホール

19.過ぎた春(大阪アジアン映画祭・ABCホール

20.アワ・ボディ(大阪アジアン映画祭・ABCホール

21.ブルブルは歌える(大阪アジアン映画祭・ABCホール

22.悲しみより、もっと悲しい物語(大阪アジアン映画祭・ABCホール

23.G殺(大阪アジアン映画祭・ABCホール

24.視床下部すべてで、好き(大阪アジアン映画祭・ABCホール

25.ハイ・フォン(大阪アジアン映画祭・ABCホール

26.オレンジ・ドレスを着た女(大阪アジアン映画祭・ABCホール

27.グリーンブック(ユナイテッドシネマとしまえん

28.ソローキンの見た桜(角川シネマ有楽町

29.ブラッククランズマン(シネクイント)

30.アベンジャーズ エンドゲーム(ユナイテッドシネマとしまえん

31.キングダム(ユナイテッドシネマとしまえん

32.主戦場(シアターイメージフォーラム

33.THE GUILTY/ギルティ

34.柳下美恵のピアノdeシネマ2019 特選エルンスト・ルビッチ

35.ブラッククランズマン(TOHOシネマズ 日比谷シャンテ

36.ブラッククランズマン(kino cinema 横浜みなとみらい)

37.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

38.工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男(アップリンク吉祥寺)

39.アド・アストラ(ユナイテッドシネマ浦和)

40.さらば愛しきアウトロー(シネウインド)

41.鉄道運転士の花束(シネマカリテ)

42.スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

43.金子文子と朴烈(パクヨル)(ココマルシアター)

44.台北セブンラブ(アップリンク吉祥寺)

45.ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

46.パドマーワト 女神の誕生(アップリンク吉祥寺)

47.メン・イン・ブラック インターナショナル

48.天気の子(グランドシネマサンシャイン

49.アルキメデスの大戦

50.ライオン・キング(グランドシネマサンシャイン

51.未成年(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019)

52.ザ・タワー(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019)

53.ブレードランナーユナイテッドシネマとしまえん

54.花咲く季節が来るまで(第28回 レインボー・リール東京)

55.白蛇:縁起(池袋HUMAXシネマズ)

56.羅小黒戦記(池袋HUMAXシネマズ)

57.ジョーカー(グランドシネマサンシャイン

58.蜜蜂と遠雷(ユナイテッドシネマ浦和)

59.都市投影劇画 ホライズンブルー(シネマハウス大塚)

60.高度一万メートルの奇跡(中国映画週間)

61.最高の夏、最高の私たち(中国映画週間)

62.流転の地球(中国映画週間)

63.ジェミニマン(ムービックスさいたま)

64.マリッジ・ストーリー(東京国際映画祭

65.モーテル・アカシア(東京国際映画祭